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口づけたまぶたに響け モォツァルト その昏きまどろみの奥まで

金木犀 きみは彼岸にかへりしか 立つやおそきと さやきむらさめ

夏落つる 痣の花咲く片膝をいだきて眠る少年のごと

教員は巨大なシメジとなりにけり 曰く"この先生きのこるには"

うつすらと妹の頰をなでる風 きみもむかしはああだつたのです

曖昧な相づちを重ねトランプを切る君と 僕と その他大勢

12秒前までティーカップであった破片に名残る紅の三日月

冬の夜の枕と夢のつかの間を 林檎のうさぎ  二羽翔けゆけり