大いなる感情.すごく大きくて強い感情.僕の暮らしそのものを包み込んで,もう抜け出し方も分からなくなってしまった.ずっと探してきたもの.ずっと前に,軽々に失って,それ以来陰日向に追い求めてきた感情.感情の獲得はこれまで虚しいものばかりだったけれど,そしてその虚しさは決して消えないのだけれど,消せないのだけれど,癒えるとするなら,癒せるとするなら,このおおきくやわらかな感情の繭の中で,どろどろになって,やがて変態し,歪な翼を得るその時なのだろう.傷口からしか生えない翼もあるし,傷口からしか見えない景色もあるんだ.それを知っていることは不幸だろうか.そうは思わない.まっさらな幸福などない.ありふれた幸福の中にはいつだって,ざらついた不幸が潜んでいて,そして日向で光を照り返すのはいつも,そういうざらざらした不幸の方なんだ.