Entries from 2019-01-01 to 1 year

言葉にしかやはり興味がない.僕は言葉の問題にしか興味が持てない.逆に言えば,言葉についてはすべてを知りたい.すべての仕組みを知りたいし,すべての可能な表現を知りたい.不可能だとは分かっている.そんなことは出来ない.出来ないことだって望んで…

57577

恍惚の朝に祈りは燃え延びる 亞拉比亞の月の色の瞳に いまだ名も無き花に名を与えむと霜降る土に春を掘る指 落涙をザッハトルテで受け止める そのままかぶりつく やわらかい 足といふ 過度に詩的な対象が 坂をのぼり おり またのぼるのだ 言葉などなくていい…

口紅を塗ること.中心から右へ,あるいは左へ,まあ左右盲の僕からしたらどちらでもいいのだけど,とにかくどちらか片方へ向けて,可能な限り滑らかに擦り付ける.色素が薄い皮膚に付着する.続けて,先ほどとは反対の方向へ,同じ動きを施す.すると口紅は…

無性に文章を書き殴りたくなる時がある.つまりそれは,文章を書き殴ることでしか発散されないような何かが僕の中に蓄積しているということで,そんなものが蓄積するということは裏を返せば,僕は文章を書くことをきっとやめられないということなのだろう. …

楽器が奏でる音色を音楽と呼ぼう.僕は楽器を演奏するのが好きだ.弦や鍵盤に触れると落ち着く.僕は楽器の音色を聴くのが好きだ.触れた弦や鍵盤を弾いて鳴らすのが好きだ.人の歌声を広義の音色とし,その広義の音色の音源であるところの人の身体を広義の…

賢さなるものに実体を与えようとして間違える人々をずっと見てきた.賢さなんてなんの意味もない.それはただの性質に過ぎない.そこに意味を見出す解釈者がいて,それは初めて意味を持ち,その意味に対して価値がつく.賢さは通貨のようなものだ.いつも相…

劣等感についての簡単な覚書. 自分が自分を愛し抜くための素材が欠乏していること.不足.欠落.渇望.許されたいという切望.差し伸べられた手を握り返す勇敢さの欠如. まだ見ぬ可能性への非合理的な恐れと,見えすいた結果への諦念.すべてを諦めてしま…

大いなるものに触れた時のあの恍惚が蘇ってきた.静けさ.虚無.魂だけがざわついて,そこに全官能が釘付けになる感覚.ある種の麻痺.何もかもが自分を経由して,遠くへと過ぎ去ってゆく感覚.情緒や情感は消え果てて,ただ真っ平な,どこまでも平坦な印象…

57577

真っ白な風船を手離した朝にピアノの音はふるへておれり オリオンの肺を貫くセスナ機の点滅に血の滴りを見ゆ 魔界へとかへりしか病める大鴉 冬の桜の枝をくはえて ままならぬモロッコを首に引き受けて かの日離した手を握る夜 "美意識"と口にするたび我が胸…

真珠が真珠になるためには,核が必要だ.アコヤ貝の中には,もともとその体内に核を持つ個体も存在するが,そうした天然の核から生成されるのは,いわゆる宝飾品としての真珠ではない,文字通りの歪み真珠だ.宝飾品としての真珠の核は,人間によって球形に…

計算とは何かという問いにこたえるのは難しい. 任意の x について,x とは何か,という形式の問いに答えることは難しい. なので,一旦,計算とは,計算機がやること.あるいは計算機がやっていること,くらいに考えておく. では,計算機が計算をするため…

57577

思惑が一粒夜から垂れてきて 手指の爪を紅く染めゆく いつまでも孤独なままなのだ 人間(ヒト)も,人間の棲む惑星(ホシ)も,あなたも ゆくならば 薔薇を一輪摘んでから 瞳を月で拭いてからゆけ ‪寝不足の街にわたしは立ち止まる 白夜に惑ふ日時計となる Java …

要するに Haskell で取り回しが難しいのって Monad みたいな抽象じゃなくて,Non-Strict Evaluation なんだよねって話. foldRight の概念を OCaml で説明したところ,"Right があるのならば Left もありそうだけどどうなの?" という極めて妥当な質問を受け…

喜びがまだ喜びであった頃.悲しみがまだ悲しみであり,月がまだ自力で輝き,太陽はまだ天球儀の内側に貼り付いた丸いシールで,まだ人に肺と心臓以外の器官がなく,腕と翼の区別もなく,星々が神話の住処であり,風が音楽を,森林が死を,火炎が祈りを,水…

57577

いつの日か空の鼓動も鳴り止んで やがて世界に降り注ぐ羽根 威風堂々 沢蟹の隊列が 道を這う我が影を踏み切る "複雑な悲しみ"と名付けた梨を 切り刻み噛み砕き嚥み込む 冬ですし寝ているつもりです 星の瞳が蒼く開く朝まで 明日にはもう光にもなれやしない …

命題論理を構成する基本的な要素は原子命題(atomic proposition)である. 原子論理式はそれ以下の要素に分割できない. 任意の原子命題は命題記号で表現される. 命題論理における意味論は,命題記号として表現された原子命題への真理値の割り当て(解釈)とし…

57577

まだ僕が夏の嵐であった頃 鉄を喰い 砂を飲んでいた頃 喩えれば 土に埋まった乾電池 あるいはぬるいソーダ そんな日 過ぎ去りし紺色の壁紙の日々 うたかたの日々 花だらけの日々 ともすれば 街ごと吹き飛ばしてしまうほど強烈なきみのまばたき 後ろからそっ…

すべてのありふれた光も,朝も,間違った姿勢で眠る夜も,青かったり,やけに憂鬱な赤橙だったりする空も,言葉も,詩と呼べそうな表現のかたまりも,電磁気的な力も,完備半順序構造も,鉱石みたいな爪の色も,手書きのトランプも,蛍光灯のどこか病的な白…

57577

冬はいい 水道水が冷たくて 美味しい それに祈りが清い 最初から単純な感情だった.ただ精密に奪いたいだけ. 五線譜に書いてみたきみの名前から溢れた音符で息ができない これはいま,今朝の寝坊の原因をロールケーキにふりかけています 満月に浸したペンで…

57577

真夜中に 親指の爪噛みながら引数にとる realWorld ふるぼけた月には紅い口付けを 星には蒼いアルゴリズムを 夕凪の野を這い渡る虫の音と 革命の骸 瓦礫 瓦礫 目覚めたら未来の群れに囲まれていて,僕はまた寝たフリをした 新世界より放たるる光線を 受けて…

泣き言を言った.泣き言を言わないと決めていたのに,決意の隙間から退屈と倦怠がこぼれ落ちてしまった.僕はとても幸せな人生を送っている.そしてその幸福に呪われて,その幸福を悲しんでいる.相変わらず世界はどうしようもなく悲しいままで,それなのに…

吐き出す.こうやって,感情を言葉にして無理やり吐き出す.そうしないと息が詰まってしまう.息が詰まってばかりの生き方をしていて,うまく呼吸ができていたであろう頃のことを,もうあまり思い出せない.遠い過去.僕がまだ多くの意味で更生可能……すくな…

57577

雲間から月光の刃くだりきて 嵐の後の激流を刺す 美しき その手 その指 その爪に 絡まる風の糸です わたし ため息を おさえる手から 溢れ出す ただなんとなく あたたかきもの いつだって永遠ばかり祈ってる ヨーグルトかき混ぜてるときも あばらから葛の蔦つ…

このところの書き物はなんだか散漫でとても良い.散漫なものを書く訓練というのは非常に難しく,というのは基本的に訓練というのはなににつけてもまず散漫ではない行為を速く正確にこなせるようになるための研鑽のことなので.散漫に散漫に,自我なり美意識…

あまりにも不甲斐なかったので,およそ心の動きと呼べそうなものをまるっきり全部止めた.ただの機能になったつもりで手足や口を動かした.僕の身体のすべての部分は,僕の身体をインターフェースとする行為の結果によって,そしてそれらによってのみ規定さ…

自己肯定感について粗雑なことを考えたが,あまりにも粗雑に過ぎて,あれを考えと呼ぶのは我ながらかなりおこがましい.なぜ自己肯定をしなくてはならないのかなど,その辺りのことをぐるぐると考えていたら,肯定すべき自己を果たして自明に仮定していいの…

たとえば,自分をしっかりと見守ること.たとえば,自分の気持ちを言葉に落とし込むこと.たとえば,自分の嫌悪感や危機感や罪悪感を飲み込んで堪えること.たとえば,自分が好きなものや好きなことや好きな人についての過剰な賛美を握り潰すこと.たとえば…

明け方の時計の音は乾燥している.夜の時計の音はベタベタとしている.昼間や夕方には時計の音が聞こえない.家にいないからだ.複数の別々な時計が織り成す,完全に規則的で,微妙に噛み合わないリズム.睡眠と覚醒のマーチ. 指先を這わせた背筋の輪郭の,…

今後,ここに書かれる,一切のことば.一切の文章.一切の物語.すべてを君という個人に捧げる.来世を仮定し,来世でまた会えたら,その時君に胸を張って,僕の人生の記録を読んでもらえるように.心臓が焦げ付くほど憧れた君に,僕の存在の断片を示すため…

何もかもを偽って何もかもを欺いて何もかもを騙して何もかもを捨て去って,そんな自暴自棄な虚無を無性に求めてしまう時があり,たとえば今日はそんな日だった.コーヒーを飲んでみたけれど,相変わらず好きになれない味だった.水たまりを見つけて,ブーツ…