Entries from 2021-03-01 to 1 month

その夜,空は高々と濃紺だった.ふだんよりずっと低く大きな月があたりの星光を淡くして,月光をふくんだ薄雲を千切りながら,海風が黒々とした波を囃していた.月明るく,ごうごうと風は鳴り,渚に波頭が崩れる音もあたりにざあと響くのに,どうしてか,目…

研ぎ澄まされた感覚の,まばゆいほどの一閃を見た.素直に感心したし,なにより,そのようでありたいな,と思った.こうしてまた僕の自己実現は抽象化してゆく.そして僕は,なぜか,なんだか,いつも現象でありたがる.ひらめきであったり,嵐であったり,…

勝手に永遠だと思っていた.勝手に無限だと思っていた.僕はいつも勝手にそういう,終末のなさを思い描いては,ずっとその中に生きている.僕の世界に終わりはなくて,ただ続いていく.咲いたり枯れたりしながら死と蘇生を繰り返す花が,あるいはその根が,…