Entries from 2019-01-01 to 1 month

ばかばかしいほど真っ暗な部屋.電気を消した冬の黎明けは芯まで暗い.換気のための窓の隙間から吹きこむ雪の匂い.つんとした静けさ.時を止めるなら今しかない.僕は起き上がって,時計の電池を抜いた. 一日がどろっとしたまま過ぎていった.粘度が高くて…

支配とか,操作とか,独占とか.あるいは所有とか.考えていると頭がくらくらしてくる.人間という生き物の,生き方の,とても根深い部分.あるいは男性の.人間の人間に対する欲望.透きとおれ.すべて無くなってしまえばいいのにと思う.なくなったら人類…

悲しいから,歌でも作ろうかと思った.そういえば,むかしは歌をよく作った.歌のための言葉も作った.とはいえ,その言葉はいわゆる歌詞ではなかった.単に言葉が拙いからではなくて,言葉が旋律に寄り添っていなかったから,歌詞になれなかったんだ.寄り…

美意識の根底には三つの要素がある.この三要素はそのまま,僕にとって有用な美しさの定義だ.まず明晰であること.つぎに厳密であること.そして過不足ないこと.僕が美しいと感じるものは,この三つの条件を満足し,またこの三つの条件をしか満足しない.…

美しいものは,美しくない器の中にしか存在できない.美しい物語,人の関心,同情,憧憬を引き受け,消費するに足る,美しい人による美しい物語.それがあれば,人は飛びつくだろう.人間の多くは美しくなく,人間の物語もまた,多くは美しくない.物語には…

いくつか歌を歌った.声があまり出ない日だなと思っていたら,途中からようやく喉が温まってきて,気持ちよく歌えるようになってからは,気持ちよく歌えた.当たり前のことだけど,気持ちよく歌うと,気持ちいい. 餃子をたくさん食べる.翡翠餃子.色が翡翠…

置いてきてしまったもの.失くしてしまったもの.振り返るたびに視界をかすめる景色.沈黙のたびに聞こえてくるメロディ.言葉にしようとして,ならなかったもの.言葉にしまいとして,こぼれてしまった言葉の欠片.よく転んだ頃,夢と呼んでいたもの.あま…

世界に対する違和感.抱え込んだ無数の過剰と欠落.綺麗なものはぜんぶ悲しい.真理は厳しく冷たい.光は闇よりもずっと隠す. 劣等感という言葉で,僕は自分の核をよく説明したがる.何年越しか,今更,そのことに強い違和感を持つようになってきた.

ゆっくりと丁寧に文章を考える.なんてことが,ここ数日まるで無くて,なんとなく日記も投げやりで,日々の暮らしも投げやりで,衝動に背中を押されて,足をもつれさせながら,ふらふらと前のめりに生きている.足元をはじめとして,色々とおぼつかない.転…

大人になることは難しい.大人っていうのは,子供じゃないことだ.子供がもっている色々な性質,つまり人間の動物的な部分が抜け落ちて,みんな大人になっていく.僕はまだまだ子供のままだ.全然大人になれない.なりたいとも思わない.なりたいと思えない…

毎日書き続ける,淡々とした毎日のこと.人との会話を振り返る.交わした言葉を振り返る.思うところがある日もあれば,何も思わない日もある.何も思わなければ,何も思わなかったと書けばいいだけのことで,いずれにせよ書くことはある.書くことがない日…

優しい世界にひとりきり.ずっと問題を解いていた.解けることが分かっている問題と,解けるかどうかは分からないけど,解けたことにしなきゃいけない問題の2種類を今日は解いた.解いているうちに,いつのまにか夜になっていて,ふと,今日がスーパームーン…

悲しいことの上に座る.いままで自分が積み上げてきたもの.いままで自分が愛情を注いできたもの.それが無駄ではないと信じたい.それが誰かの何かを変えると信じたい.自己満足が,自分だけの満足で完結しないと信じたい.僕は誰かのために生きられている…

時には息がつまるほどの没入.過集中という言葉は本当に的を得ている表現だと思う.過,という字で,それが望ましくない結果につながることが容易に想像出来るからだ.僕は過集中が原因で何度も倒れた.脱水症状と不眠が主な症状.文章を書いていたり,数学…

たくさん入るとたくさん出てくる.なんだってそうだ.アウトプットが思ったようにいかない時は,だいたいインプットが足りない.うまく想像力が働かないときは,だいたい想像したいことについてあまり知らない.僕は想像力が豊かなほうではない.これってつ…

真新しいバスタオル.よく水を吸う.体をぬぐうと,本当は拭き取るべきではないものまで,なにもかも取り去ってしまいそうで,自然と手に込める力が緩んだ. ティーカップを割ってしまった.大切な大切な宝物だった.とても悲しい.もうカップとしては使えな…

あわただしく泡立つ日.ぶくぶくと,こころは煮詰まった.移動,移動.また移動.移動してばかりの一日.あっちにいって,こっちにいって.僕は左右盲で,右と左が分からないのに,右顧左眄.慣れない気を遣って,魂が削れてゆく.つかれちゃったな.あんま…

批評の暴走は続く.なぜ批評家というのは,研究者のような顔をしたがるのだろう.批評と研究は似てもいないし,きちんと異なっている.批評に理論はないが,学問には理論が必要だ.ここで理論という言葉は,その定義から,単なる体系とは区別される.理論と…

断続的なイメージ.言葉にしなくちゃ分からないもの.分からないから言葉にならないもの.言葉にしなくても分かっているもの.分かっているから言葉にしないもの,出来ないもの,こと.ありふれた出来事.目眩がする.ありきたりな目眩. アティヤの最後の論…

好きなことを好きなだけ.だいたいそんな感じで生きている.自分が何者なのかは分からない.でも驚くべきことに,人間は自分が何者なのかいっさい分からなくても,それなりに平和に暮らしていける. 好きなことと得意なことが近かったのは幸運かもしれない.…

一人の狩人が,見知らぬ森の中,道を失って,日がな一日歩き続けた末,夕闇も迫った頃,とつぜんの雨に降られ,風はごうごうといきおいを増し,とにもかくにもこの風雨をしのぐため,一夜のねぐらをみつけなくてはと,重い瞼をたくましい腕でぬぐいながら,…

ひとまとまりのひとりごと,ひびのことごと.暮らしていると,どうしても何かを書きたくなるときがあるから,こういう場所は必要だ.誰に向けて書くのでもなく,ただ書くという行為にだけ意味があるような,シャワーを浴びながら口ずさむうろ覚えな歌のよう…

途中まで見た映画.最後まで読んでいない本.またねって言ったまま二度と会わない人.かけたことのない窓の鍵.メモせずに忘れた楽しい思い付き.聞いたまま寝てしまったラジオ.アラームより先に起きた朝.たまに見ると売り切れているAmazonの"あとで買う"…

空が高い.夜空のくせにやけに澄み渡って,星がパラパラ降ってきそうだ.月を探す.グレープフルーツジュースを飲む.タバコを吸う.昔,これと同じ色をした空を見た.その時,僕は誰かと手を繋いでいて,その手はひんやりと冷たかった.冷たかった,という…

循環する言葉たち.ぐるぐると渦をまく.自分から自分に語りかけるために発明したたくさんの表現.自分にしか伝えない自分のこと.入り組んだ私的言語の断片.そういうもののひとつひとつが,鎖のように連なって,僕自身を呪縛している.これは悪いことじゃ…

感情のカオスが折り重なる.僕はきっと感情表現が下手だ.とくに,激しい感情の表現がとても下手.手を叩いて笑うこともないし,大声で怒鳴ることもない.しないんじゃない.出来ないんだ.気持ちは大きくふるえても,そのふるえを,その激しさを,僕の身体…

もう声は届かない.そこには何も残らない.あなたは忘れてしまう.何もかも,きっとこれからどんどん忘れていってしまう.死んだんだ.僕の愛したあなたはもう死んでしまっていて,あなたの身体は単なる面影の器になってしまった.不気味で仕方ない.あなた…

ずっと秒針の音がしている.今日は,音楽を聴こうと思った日だった.昔,まだインスピレーションとか,感受性とか,世界理解とか,美意識とか,そういう,自分なりに加工したエゴイズムを切り売りして生きていたころ,よく音楽を聴いていた.加工したエゴイ…

書いては消す.書いては消す.書く.違う.違うよ.僕はいま,こんなこと,つゆほども考えていない.消す.言葉にしたいことはあるんだ.それについて,印象も,感情も,きちんと準備してある.書く.ああ,違う.なんで.どうして上手く言葉にならないの.…

胸に手を当てる.呼吸をする.骨が広がって,肺が膨らんで,肩がキュッと引き締まる.力を抜くと,気管支から息が漏れて,肺は萎縮する.吸って,吐く.また吸って,また吐く.こんなことを,僕はずっと繰り返している.ずっとずっと,飽きずに,弛まずに,…