Entries from 2021-01-01 to 1 year

癒しも施しも全て.何を癒しと呼び何を施しとするか.それを決めるのは,決めていいのは,ただ癒され,施されたその人だけで,他の誰でもない.すなわち,最初から癒しであるような効果はなく,また,最初から,ア・プリオリに施したりうる行為もない.僕が6…

待たせてごめん.きっとずっと僕が来るのを待っている.かつてのあなただったら今の姿を僕に見せたくないだろうなと思って,時世を言い訳に会わずにおこうと,ずっと思っていた.だけど,たぶんずっと僕を待っているんだろうね.心配ばかりかけたし,迷惑ば…

誰よりも賢くて,誰よりも誇り高くて,誰よりも怠惰で,誰よりも純粋なきみへ.きみの様子が変わってからもうずいぶんと経つものだから,そして,その間もずっと僕たちの関係は続いていたものだから,僕は最近,昔のきみを忘れそうになる.きみは昔からずっ…

ひとつのままならないたましいの,これは救済の物語だ.そのたましいは,他のあらゆるたましいと同じように,まるでなんの目的もなくこの世界に生じた.ただ他の多くのたましいたちと違ったのは,このたましいに限っては,本来たましいがそなえているはずの…

なんだかあわただしい.色んなものが一斉に動き出して,春を感じる.アスパラは美味しいし,色の濃い花は咲くし,日の出から日の入りまでの周期はずいぶん大回りになってきたし,コートが必要なタイミングも減ってきた.あとはサボっている歯医者と健康診断…

その夜,空は高々と濃紺だった.ふだんよりずっと低く大きな月があたりの星光を淡くして,月光をふくんだ薄雲を千切りながら,海風が黒々とした波を囃していた.月明るく,ごうごうと風は鳴り,渚に波頭が崩れる音もあたりにざあと響くのに,どうしてか,目…

研ぎ澄まされた感覚の,まばゆいほどの一閃を見た.素直に感心したし,なにより,そのようでありたいな,と思った.こうしてまた僕の自己実現は抽象化してゆく.そして僕は,なぜか,なんだか,いつも現象でありたがる.ひらめきであったり,嵐であったり,…

勝手に永遠だと思っていた.勝手に無限だと思っていた.僕はいつも勝手にそういう,終末のなさを思い描いては,ずっとその中に生きている.僕の世界に終わりはなくて,ただ続いていく.咲いたり枯れたりしながら死と蘇生を繰り返す花が,あるいはその根が,…

天才扱いを受ける.受けてきた.いつからかは思い出せない.昔からそうだった.天才.なんて簡単な肩書きだろう.ポジティブな感想なのだということくらいは分かる.しかしそれ以上は何も分からない.僕を天才呼ばわりする人は,僕の何を理解することを諦め…

見知らぬ土地で過ごす.離れること.しかも,遠く離れること.移動ではなく,居住すること.そんなことごとを,静岡で噛み締めている. 僕は結局のところ,都市の人だし,都市の気配の中でしか,いたるところ匿名な街並みの中でしか,きっとそれらしく生きて…