研ぎ澄まされた感覚の,まばゆいほどの一閃を見た.素直に感心したし,なにより,そのようでありたいな,と思った.こうしてまた僕の自己実現は抽象化してゆく.そして僕は,なぜか,なんだか,いつも現象でありたがる.ひらめきであったり,嵐であったり,喝采であったり,祈りであったり,混乱であったり,開花であったり,詩作であったり,恋であったり,慈悲であったり,克服であったり,迷いであったり,したがる.人間でいることにすごくこだわって,人間の可能性,人間の美しさ,人間の豊かさをきっと誰よりも本気で信じているくせに,人間でいることに心底疲れ切っている.人間としての必然性を何よりも重視しているくせに,人間存在についてとても安易に狂気を定義するし,その狂気の排斥を,それこそ狂気的に徹底しようとする.さあ僕の狂気を愛せ.