かくも穏やかな暗黒.本当は闇,という言葉を使いたかった.だけど,闇は意味を背負い過ぎているから,ただ暗いこと,光が少ないことだけを,言葉として切り取るのには不向きだ.だから代わりに暗黒という語彙を使ってみたけれど,あまり成功しているようには見えない.今日は言葉がうまく扱えない日だ.思考から表現がすり抜けていってしまう.そのこと自体は,悔しくもないし,悲しくもない.ただ,もどかしい.隔靴掻痒の思いに駆られながら,今もこんなふうに,不恰好な言葉を連ねては,日記だと言い張る.

 

息を止めたら苦しいはずなのに,しばらく止めてみても全然苦しみの気配がないまま,意識ばかり遠のいて,あ,まずいな,と思って,やめた.何も食べなかったらお腹が空くはずなのに,何も食べずにいてもあまり空腹を感じず,体温だけがやけに下がってきて,まずいな,と思ってものを食べる.寝ずにいたら眠くなるはずなのに,眠気はやってこないまま,ある時バタッと気絶する.夢の記憶があれば睡眠,なければ気絶だ.僕はしょっちゅう気絶する.呼吸も,食事も,睡眠も,いまだにままならない.人間である前に,ヒトという種の一個体として,僕はきっと未完成のまま死んでゆく.