「誓います」

「では,誓いのキスを」

花嫁の顔を覆うヴェールに花婿の指が優しくかかる.ゆっくりとヴェールがたくし上げられる.その下には花嫁の美しい顔.を覆うヴェールがある.花婿の指が優しくヴェールをたくし上げる.花嫁の顔にはヴェールがかかっている.花嫁は待ち遠しそうに俯いている.しかし花婿が,何度,何枚ヴェールをめくっても,花嫁の顔があらわれない.だから,誓いのキスは行われない.当然,式も終わらない.花婿は,何も終わらないまま,延々とヴェールをめくり続ける.そうしながら,花婿は考えている.

「いつになったら結婚生活を始められるのだろう」

花嫁も考えている.

「結婚生活ってなんていいものなのだろう」