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恍惚の朝に祈りは燃え延びる 亞拉比亞の月の色の瞳に

いまだ名も無き花に名を与えむと霜降る土に春を掘る指

落涙をザッハトルテで受け止める そのままかぶりつく やわらかい

足といふ 過度に詩的な対象が 坂をのぼり おり またのぼるのだ

言葉などなくていいとは言うものの あるならあるに越したことはない

翔ぶからに 夕さり純白く染め抜きて 鷺発ちにけり 冬,きはまるる

人も無く 音も無く 非常口のみが 剥製の眸をあをく灯せり