東京の真ん中の初春の夜の記憶.僕は過呼吸になって倒れた.ぬるま湯に身体を浸して,じわじわと体温を戻す.口にはビニール袋.バスタブの中で血液を解凍する.

初めて何かを守ろうと思った時のこと.折れてしまったクレヨンに,ビニールテープを巻き付けて,蘇生しようとした記憶.

だんだんと短くなってゆく言葉たち.繋がらない印象.断片的なフレーズ.歌.日本語.永遠.また,永遠.

海の記憶.水辺で僕は岩と生き物に怯えて立ちすくんだ.それを父が笑っていた.晴れた空.写真と記憶が入り混じる.この記憶はたぶん,昔飾ってあった写真から想像,創造したもので,きっと本物じゃない.本物の記憶.そんなものになんの価値があるんだ.