かぞへうた

 

人のまなこに (一)

蓋をして (二)

見つめし (三)

夜更け (四)

いつも (五)

むつかし (六)

 

いくさ場の (幾)

名無き (七)

やつがれ (八)

ここのみに (九)

とをく聲聞く (十)

かぞへうた

 

旗散らし (二十)

身そのままに (三十)

他所へ (四十)

急げる (五十)

無双の落人 (六十)

な嘆きそ (七十)

 

やそありし(八十)

ここの亡骸に(九十)

桃枝供ふ(百)

かぞへうた

 

訳文

死人の目に手で蓋をしつつ

見つめる夜更けはいつも気分が悪い

この戦場に雑兵たちの数え歌の声が遠く聞こえる

無双の敗残兵は嘆くことも許されず,破れた旗印を散らして,身体一つで他所へと逃げ急ぐ

無数にあるここの死体に厄払いの桃の枝を供えながら数え歌を歌う