じりじりと,結末へとにじり寄るように物語を書いている.こういう書き方を試みるのは初めてで,まだ調子がつかめていない.とはいえ,長い物語を書くためのコツというか,秘訣のようなものを掴みつつある.

いままで僕は,自分の発想にあるものをなるべくそのまま文章として彫琢することに苦心してきた.でもそれだと,一度に思い描ける発想,その情報量の範囲しか表現出来ない.その発想のなかに含まれながらも,決して一度には表面化しない多くの情報を,僕の文章表現はこれまで切り捨ててきた.それは詩の本質ではないと思っていたし,今も思っている.

しかし,僕は今物語を書いている.物語は詩のような一枚の,静的な映像ではない.それはダイナミックな流れがある.それを漏らさず書き残すためには,そのダイナミズムに耐えうるだけの構成が必要だ.

ワンカットで映画を撮るのは難しいのだな,とつくづく思う.