円の数をかぞえる.円,円,円,円,円,そして円.見慣れない天井には円形のオブジェクトしか存在せず,うち一つは自ら発光し,一つは使命を忘れたまま沈黙し,一つは自ら発光する円筒を鉛直方向に固定していて,残りの三つはただ単に淡々と円であり,その円の中に円があり,その円の中にも円があるものとないものがあり,僕はそれら円の中の円も円として数えるべきか否かを今なお延々と悩み続けており,故にこの天井にある円の数は未だ確定していない.

ふと横を見ると見慣れないカーテンの模様が目に入り,これもまた円であり,等しい間隔で配置された小指の先ほどの大きさの円は,大きな窓の両脇に畳まれて凝集し,蝟集し,数えるのも嫌になるくらい大量なので,故に,このカーテンに施された円の数は,既に確定しているが,僕の極めて属人的な怠惰のために,未だ確認されていない.

半透明な円形の灰皿に,円筒形のタバコを押し付けると,円筒形は潰れて,如何にも形容しがたい歪な立体となって,僕の指先をわずかに着香した.手を洗いにゆく.