2020-09-08 57577 火を籠めて 闇に飛沫けり 一滴の線香花火 夏のとむらひ 月いでよ かくうるはしきほほえみを 照らさで他の何をか照らさむ くちなしの香もて結ひたる黒髪の綾目留めき万朶の飾り 宵雨の名残りを受けて 池の端 ひとえの袖に泳ぐ流金も ありあけに きみの呼吸は寝静まる 鵜もミミズクもきづかぬうちに 手を繋ぎ 旅するのです 若い詩と青い鼓動の彼方 あなたと 病む貝はふるえて眠る 内殻に比喩の真珠の核をいだいて