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火を籠めて 闇に飛沫けり 一滴の線香花火 夏のとむらひ

月いでよ かくうるはしきほほえみを 照らさで他の何をか照らさむ

くちなしの香もて結ひたる黒髪の綾目留めき万朶の飾り

宵雨の名残りを受けて 池の端 ひとえの袖に泳ぐ流金も

ありあけに きみの呼吸は寝静まる 鵜もミミズクもきづかぬうちに

手を繋ぎ 旅するのです 若い詩と青い鼓動の彼方 あなたと

病む貝はふるえて眠る 内殻に比喩の真珠の核をいだいて