博物学ドキュメントシリーズを再読する.くだらないが面白い.くだらなさにとことん付き合うのは人間的美徳だとつくづく感じる.くだらないものにいくら付き合ってもくだらない結論しか出てこないのだけど,くだらないことに一生懸命なその姿勢そのものはほぼ必ず面白いし,そこにはある種の尊さすら宿る.

博物学という学問は,今となれば未熟児のまま死んでいったような印象が強く,蒼古な風合いそれ自体を愉しむ高踏的ディレッタンティズムのカビ臭い雰囲気も漂うが,その表面の埃を払って読み返してみると,当時の知識人がインク臭い部屋でさもくだらないことを大真面目にものしている光景が思いなされて感慨深い.「サイと一角獣』も『フイシオログス』も,どことなくボルヘスっぽい諧謔を感じさせるよい本だった.