世界が,この世界が,悲しみで満ちていなかったことなどない.いつでも世界は悲哀一色に染まっている.だから,僕はいつも嘆いている.なんでこんなに悲しい世界を生きているのか,その理由がわからないからだ.抱えきれない悲しみに押しつぶされながら,それでも生きていくために自分を納得させなくてはいけない.それでなくても懐疑的な自我を,自分自身で守っていかなくてはいけない.そのことも,その努力が決して実を結ばないことも,それを深く理解してしまっていることも,何もかもが,やはり悲しい.

何もない景色の中を,汗にまみれて歩く.とても惨めな気持ちになる.眠れない夜が,不眠の朝に変わる.どんどん疲れていく自分を見て,さらに心に疲労が積もる.何か大きなものが,僕をこの,捉えどころのない負の感情から,切り離し,押し流し,飲み込んで,消し去ってくれればいいのにと,そう思う.