明け方の時計の音は乾燥している.夜の時計の音はベタベタとしている.昼間や夕方には時計の音が聞こえない.家にいないからだ.複数の別々な時計が織り成す,完全に規則的で,微妙に噛み合わないリズム.睡眠と覚醒のマーチ.

指先を這わせた背筋の輪郭の,ぞっとするほどくっきりとした陰影にため息がでる.きっとここからはなんだって生えてくるのだろう.翼はもちろん,古書の栞や,機関銃や,曇りガラスの板や,昨年の今日の朝の君の寝息すらも,きっと.