いつも何かからの解放を祈っている.たとえば残酷な早起きや,硬いベッドや,湿気や,高圧的で攻撃的な人格否定や,追放や,彷徨や,自分自身の身勝手さや,叶わなかった夢や,生えなかった翼や,飛べなかった空.そういうものが,自分から見えなくなってくれれば,僕はもう少し楽に呼吸できるようになるのだと思う.でも昨日も,今日も,そしてきっと,いや,明日も間違いなく,僕には飛べやしないのに,青かったり白かったりしながら,空はずっと空の場所にある.細長く舗装された坂道を這うように往復する僕をやさしく包み込んで,空は空としてただ広がっている.たった30cmでも宙に浮いていられたら,それだけで空を飛んだと胸をはれそうなのに,僕にはそれすらできない.もちろん,僕以外の誰かにも,いまのところそんなことできない.