差について考えていた.僕はとても遅れていた.まだ子供のまま,色々なことから逃げたまま,終わらせられないまま,時間にまかせてすべてが取り返しのつかない状態になるのを,これまでただ待っていた.それではいけないな,と思った.

自分を綺麗にしなくてはいけない.せわしなく動き回る思考や,特有の落ち着きのなさと,背中合わせの過集中に振り回されながら,僕はゆっくり,本当にゆっくりと歩いてきた.急に急ぐとまた躓くから,少しだけ歩幅を広げて歩く.いつになく長い梅雨空の下を,傘もささずに濡れて歩く.濡れるのは悲しみの比喩ではない.単なる事実だ.

人間を外側から見れば,すべて事実の塊でしかない.自分を外側から見ることはとても難しくて,だから,純粋な事実の塊として生きていくのもとても難しい.

幸せについて漠然と考えて,漠然とした結論を出した.幸せというのは,ため息の少ない状態のことだと思った.