悲しいから,歌でも作ろうかと思った.そういえば,むかしは歌をよく作った.歌のための言葉も作った.とはいえ,その言葉はいわゆる歌詞ではなかった.単に言葉が拙いからではなくて,言葉が旋律に寄り添っていなかったから,歌詞になれなかったんだ.寄り添わせようと思って書いてもいなかった.どうせ自分しか歌わないのだから,それでもいいかな,と思っていた.実際,僕の作った歌は僕にしか歌われなかった.どの歌にも名前はなかった.今更名前を与えようとも思えない.だいいち,すでにほとんどを忘れてしまっている.

Haskellで定義したラムダ式を使った無名関数.名前のないまま挙動だけがある関数が,自分で作った自分のためだけの歌に重なった.それらの旋律も言葉も,ほとんど覚えていない.無責任な人間が,無責任に作って,無責任に忘れた,かつて歌だったもの.一音一音カリー化されて,せめて安らかに眠れ.どこかに,永遠に.