ありえないことなんてない.ありえないことなんてありえない.なんだって生じる.なんだって起こってしまう.自殺も誕生も椅子の破壊も鶏卵の落下も電球のアポトーシスもなんだって生じる.適者生存の原則なんてしょせん単なる原則にすぎないとばかりに直感的に明らかな強者が死に,猛者は倒れ,陽動は失敗し続けて,なにごともなくただ隅ですわっていた青白い顔の弱者が申し訳なさそうに覇権を握ったりしている.どんどん言葉ばかりがあふれてきてとめどない.まだこの世界に明かりが足りているうちに,僕は出かけたい.見たことのないはずのものを見に行きたい.見たことがないと確認するためだけに見に行きたい.可能性みたいなものを信じ続けたいんだ.どんなに追い詰められて終わりが見えたとしても,それでも歯を食いしばってやらなきゃいけない,やり通さないと生きている意味が失われてしまうようなことを,すごくたくさんのことを,やっつけながら僕たちは生きていくしかないのだ.どうしようもない人間たちに囲まれた,どうしようもなく無個性で潔癖なこの,憎たらしい世界に祝福を!