あまりにも不甲斐なかったので,およそ心の動きと呼べそうなものをまるっきり全部止めた.ただの機能になったつもりで手足や口を動かした.僕の身体のすべての部分は,僕の身体をインターフェースとする行為の結果によって,そしてそれらによってのみ規定されていて,その時そこに,僕がなんらかの形でも介入する余地は微塵もなかった.とても苦しくて逃げ出しそうになったけれど,とにかく無に徹することでなんとか乗り切ろうとした.影となり,背景となり,街の雑踏となり,朝のまばたきになり,つまりそういうありふれた,場合によっては多少心地の良いだけのノイズとして動いたり働いたりした.ひたすらに心を殺して目の前のことだけをする.何も明るいものはないし,どこにも光は見えないし,心が屈辱で腐敗しそうだったのに,きっと何も変わらない明日を僕は生きてしまうし,なにも変わらない屈辱感や敗北感となんとか折り合いをつけながら,昨日だった昨日や明日になるはずの明日をぼーっと視界の端にとらえたまま,ぼくはどこまでも堕落していく気がする.