悲しいことの上に座る.いままで自分が積み上げてきたもの.いままで自分が愛情を注いできたもの.それが無駄ではないと信じたい.それが誰かの何かを変えると信じたい.自己満足が,自分だけの満足で完結しないと信じたい.僕は誰かのために生きられているだろうか.僕は誰かにとっての幸運だったことがあるだろうか.僕は自分を祝福するために必要なだけ,誰かの人生を祝福してこれているのだろうか.

走った.風が冷たかった.夜の街.街灯の光.揺れながら流れてゆく濃紺の景色.木々や,家々.3人の呼吸がズレては重なり,またズレて,重なる.歩幅の違う足音.坂を登ったり,坂を下ったり,まっすぐな道を全速力で駆け抜ける.帰り道,残った力を振り絞って,強がりなラストスパート.汗と呼吸.背中があつい.肺と心臓をなだめる.座らない.部屋の中をうろつきながら,ココアの味のよく冷えたプロテインを飲み干す.あ,それと,意外とランニングシューズとしても悪くなかった,普段使いのスニーカー.