この世界との付き合い方がどんどん分からなくなってくる.昔と呼んで差し支えない程度の昔,世界との折り合いをつけるために,僕はずっと,世界に理解されようとしていた.そのために,自分についての考えや感覚を,可能な限り言葉にして,誰かや何かに伝わる形にまとめようとしていた.

それから少し経って,僕は世界から理解されることを諦める.自分が,理解するに足る存在だという仮定が置けなくなったからだ.だから今度は,自分が世界を理解しようと思った.自分から世界に歩み寄り,自分から世界に語りかけるための,その手段を必死に考えていた.その過程で得たものは少なくなかったけれど,結果は芳しくなかった.結果に期待していたわけではなかったけれど,虚しい結果を正面から受け止めるのは,それなりに悲しかった.

次に僕は,物語を作った.自分が理解できて,自分が理解される範囲で世界を模倣し,その模造品を世界と呼ぶことにした.そんな積極的な自己欺瞞を,それとして貫こうと思った.結局,それもうまくいかなかった.模造品の寿命は,思ったほど長くなかったし,模造品をメンテナンスし続けるためのコストを払う余裕が,僕になくなってしまった.

物語を失って,僕は今また迷っている.自分のために,どんなことをしてあげられるのか.未来に対する準備は,まだ手付かずのまま放ってある.