時は老いる.永遠を信じるのが日に日に難しくなっていく.かつて,そうだな,ちょうと10年くらい前だったら,いつでも振り返ればそこに永遠があり,足元を見ればそこらじゅうに永遠や永遠のかけらが転がっていて,鏡の前に立てばすぐに自分が永遠そのものであることを確認できたのに,いまや僕はちっとも永遠ではなくなってしまった.

気がついた時にはもう,僕はすっかり時間になっていた.あるいは,名詞であったはずの僕は動詞になっていた.値であったはずの僕は関数になっていた.絵画であったはずの僕はアニメーションになっていた.せわしなく動き回ることでしか,自己同定できなくなった.自分の痕跡を眺めるようにしてしか,自分の有様を理解出来なくなった.これから僕はもっと,どんどん時間になっていく.さよなら,永遠だった頃の僕.それに,僕を永遠にしていた悲哀の世界.またいつか.