演出されたシンプルほど腹立たしい欺瞞はない.僕はその向きのシンプルが大嫌いだ.本質的にシンプルなものがシンプルであるのは構わない.それはただ,美しいだけだからだ.しかし,インターフェイスだけやけにシンプルそうに見えて,その実,中身は散漫で混乱しているようなオブジェクトが,世の中には多い.とても多い.あまりにも多い.多過ぎる.そんなものを見るにつけて,僕は苛立っている.僕にとって美しいものは,妥当なシンプルを積み上げて組まれた壮麗さだからだ.優美なものがすべて壮麗とも限らないが,僕はにとって壮麗と思しきものはすべて優美を備えている.そして,僕が美しいと思うそれらはよく,見掛け倒しだとか,奢侈に過ぎるだとか言われる.うるさい.本当にうるさい.見かけの,仮初のシンプルで守破離の離を気取るばかりで,守も破も知らない未熟な感性で僕にものを言うな.