一枚の写真をずっと眺めていた.何か意味があるものが写っていると信じて,くまなく写真の中を探した.浮ついた感情以外,なにも写っていなかった.少なくとも,今の僕にとってその写真は,なんの意味ももっていなかった.それなのに,そのはずなのに,目が離せなかった.得たものは多かった.でもそれ以上に僕は多くを失った.それは事実で,嬉しくも悲しくもない.だけど,僕の中に渦巻いて,今も止まることなくうごめいているこの感情,感覚,映像,声,言葉,光.どうしようもなくこびりついている,硬い錆のような,歯痒さ.届かなかったもの.届けられなかったもの.処理が間に合わないまま置き去りにされた,無数のメッセージ.無数の,おそらくは,ラブレターに似たもの.